飼い主のいない動物たちへの愛情の証です
Vol.5 石川ドッグレスキュー(上)
取材対象
石川ドッグレスキュー
代表 池田裕美子さん
犬や猫の殺処分数低減を目指すセーブペットプロジェクト(SPP)では、ノミ・マダニ駆除薬「フロントライン」シリーズの売上の一部を、新しい家族を探す犬や猫のために役立てています。今回はSPPスタッフが支援先団体の1つ「石川ドッグレスキュー」を訪問。長年石川県内で保健所に収容された犬たちの保護活動に取り組んできた同会代表の池田裕美子さんに、これまでの経緯と現状についてお聞きしました。
バザーの収益を保護犬たちのために
SPPスタッフが訪問したのは、石川ドッグレスキューが年に3回ほど石川県内で開催しているチャリティバザーの会場です。バザーでは活動を支援する皆さんから寄付された様々な品物がお買い得な価格で販売されていて、会場は買い物客で大賑わい。バザーの収益(1回につき20~30万円ほど)は、会が保護する犬たちの医療費やフード代などに充てられます。バザーを運営するスタッフは約50名。うち約半数は同会の正規会員、残りはバザーのお手伝いを申し出てくれたボランティアの皆さんだそうです。会場内では、保護犬の譲渡会も行われており、約10頭の犬たちが新しい飼い主との出会いを待っていました。とても活気のあるバザー会場の様子を見ている限り、順風満帆に見える同会の活動ですが、ここまでくるまでには会の設立者で現代表の池田裕美子さん以下、会員のみなさんの大変な努力がありました。
小学生時代から保護活動を開始
池田さんが犬の保護活動を始めたのは、なんと小学生時代!小学校3年生くらいのとき、祖父に連れられて子犬をもらいにいった保健所で「殺処分」の事実を知ったのがきっかけだったそうです。「天と地がひっくりかえるくらいのショックを受けました。それまでは、子ども心に犬は人間の友達や家族のような存在だと思っていましたから…。何の落ち度もない犬を『処分』という名のもとに平然と殺してしまうシステムが存在していること自体が、信じられませんでした」。さらにショックだったのは、自分がこれまで可愛がっていた近所の家の犬たちも保健所で処分されていたこと。「近所の家の飼い犬に子犬が産まれるたびに、嬉しくてよく遊びに行っていました。でも少し大きくなるといつのまにか子犬たちがいなくなるんです。その家の人に聞くと『テニスコートのそばに子犬を引き取ってくれるところがあるのよ』と。その日、私が祖父に連れられていった保健所はまさにテニスコートのそばにあったんです…」。大人は信用できないと思い詰めた池田さんは、以降、街で子犬を拾っては近所の空き家に匿って密かにエサを運び、近所の家を1軒1軒訪ねて「犬をもらってください」と頼んでまわっていたそうです。「保健所で見たたくさんの犬たちの顔が頭から離れませんでした。私は1頭選んで連れて帰ったのですが、その他の救えなかった犬たちのことを考えると…。自分の無力さを思い知り、大人になったら保健所の犬たちを全部助けてあげようと心に誓ったものです。でも、実際は大人になっても、私は相変わらず無力でした」。
周囲の人を動かした、メルマガの力
2002年ごろから、保健所から犬を引き出して保護、里親を探す活動を1人で始めた池田さんでしたが、もちろんすべての犬を引き出すことは不可能でした。「結局すべての犬を救えない自分が悔しくて悲しくて…。悩んだ末に思いついたのは、メルマガを書くことでした。メルマガで自分の見た悲しい現実を1人でも多くの人に伝えることが、何の落ち度もないのに殺されていった犬たちのために、私ができる唯一のことだったのです」。池田さんが週に2~3回、想いの丈を書き綴って発信するメルマガは、少しずつ周囲の共感を集めるようになりました。実は、チャリティバザーを始めるきっかけを作ったのも、このメルマガ。メルマガを読んだ愛犬家グループの人たちが、「バザーをやってその収益を寄付します」と申し出てくれたのです。このようにして少しずつ支援の輪が広がり、ボランティアとして活動に参加してくれる仲間も増えていきました。