飼い主のいない動物たちへの愛情の証です
第2回 伴夫妻と佐助くん
セーブペットプロジェクト(SPP)では保護犬、保護猫と暮らすご家族のお話をシリーズでお届けしています。シリーズ2回目となる今回は、SPPの支援先団体であるアニマル・ハート・レスキューから柴犬の佐助くんを引き取った伴夫妻のもとを訪れました。
どんなリスクがあっても一緒に面倒をみていきたいから
東京の中野区に住む伴夫妻は、結婚して3年目。ともにご実家で犬を飼われていた経験があります。妻の茉美さんには、かつて実家で面倒を見ていたミニチュアダックスを大阪赴任中に譲渡されてしまったという苦い思い出がありました。「最後まで看取ることができなかった」という罪悪感から、結婚後も口癖のように「犬を飼いたい」と繰り返す茉美さんを見かねて、夫の雄斗さんはこう言います。
「誰かに飼われる可能性の高いペットショップのワンちゃんよりも、殺処分される犬の中から探してみたら?」
その言葉に茉美さんは「命を助けることで、罪滅ぼしになるなら」と、保護犬からペットを探すことを決めるのです。
ちょうど引越のタイミングでした。ペットと住める物件に移り住んだお二人は、すぐに保護犬の情報をインターネットで検索。その日のうちに、横浜で開催されていたアニマル・ハート・レスキューの譲渡会に向かいます。
そこで出会ったのが柴犬の佐助くん、推定2歳。茨城の動物指導センターから引き出されたばかりで、散歩に連れて行くのも一苦労なほど臆病な性格でした。それなのに、佐助くんは自らケージを出て雄斗さんの懐に入り、なついてきたというのです。
「激しく人見知りをする犬なので、今思えば稀なことだったのでしょう」と茉美さん。何かの“縁”を感じたお二人は、トライアルとして佐助くんを家に連れ帰ります。おとなしい佐助くんを見て、茉美さんは「いい子だな」と、思ったそう。
「犬は吠えるし、鳴くものだと思っていましたが、佐助は声帯がないのかと思うくらい、うんともすんとも言わない。彼がどんな2年間を歩んできたのかわからないのですが、見ているといじらしくて。」
佐助くんを飼うことについて二人の間で異論はありませんでした。たとえ佐助くんのプロフィールに“フィラリア症陽性”とあるのを見ても、その気持ちはゆらがなかったと言います。将来どんなリスクが出てくるのか二人で話し合い、出た結論は「そのときはそのときだよね」。
「薬さえ飲んだら完治の可能性もあるようだし、縁あってのことだから一緒に面倒をみようと、決めました」と、雄斗さんは話してくれました。
消えていく命に貢献できるチャンスもあることを
知ってもらえたら
控えめな性格の佐助くんは、当初フードにも口をつけようとしませんでした。お二人は缶詰を混ぜたり、フードを手作りしたりと、いろいろな工夫を凝らしたそうです。その甲斐あって半年程前から急に食べてくれるようになった佐助くん。やっと今では上手に甘えられるようにもなってきました。
「散歩を嫌がるのは相変わらずですが、僕らがリビングでテレビを見ていると、間に入ってきたり、帰宅すると玄関まで迎えにきてくれたりね」と雄斗さんが言うと、茉美さんは「寂しいとか、嬉しいという感情がわかるようになりました」と、顔をほころばせます。
お互い仕事を持つ身として昼間はかまってあげられない分、朝の散歩は雄斗さんが担当し、帰宅の早い茉美さんが夜の散歩と役割を分担しながら、限られた時間を佐助くんと一緒に過ごしているのだそうです。
フィラリア症のため佐助くんは毎月の投薬が欠かせませんが、「いい子にして食べるよね? あのお肉みたいなノミ・マダニの薬も好きだよね」と、雄斗さんに笑いかける茉美さん。どうやらフィラリア薬と一緒にあげるノミ・マダニ駆除薬も“食べるタイプ”で統一し、投薬の時間を楽しんでいる様子です。
その他の健康管理については、隔月で遊びに行くアニマル・ハート・レスキューの施設で体重測定やシャンプーなどのケアをしているそうです。
「基本的なことはうちでやっているので病気になったら近くの動物病院に行きますが、それ以外はスタッフの方々に佐助の顔を見せがてら、健康状態を見てもらっています」と雄斗さん。
予防の大切さについて伺ってみたところ、「外飼い、内飼いの違いはあると思うけど、人間の予防接種みたいに犬を飼ったら予防をルール化してあげるべき」。
茉美さんも「予防できるのに病気になってしまった佐助が不憫でなりません。虫に食われたところは治らないわけですから」と訴えます。
現在、国内で殺処分される犬猫は年間10万頭以上。悲しい現実をひとり一人がどう考えて行くかが問われています。ペットとして保護犬を選ぶことについて雄斗さんはこのように話してくれました。
「僕はペットショップで飼うことを否定しませんが、消えていく命に貢献できるチャンスもあるんだということを知ってもらえたらいいと思う。」
命の大切さから始まるペットとの関係もあると、教えてもらった里親訪問となりました。