Vol.2 被災時に役立つペットケアを学んでおこう
多くの貴重な命を奪い、各地に甚大な被害をもたらした東日本大震災から、5年。震災で得た教訓を風化させないために、そして大切なペットの命を守るために、今、私たちには何ができるのでしょうか?
第2回目は、実際に災害が起きた場合を想定し、ペットが受けた精神的なダメージやそれに起因するストレスをどうケアすればよいのかを考えます。
東日本大震災では被災地のペットはもちろん、周辺地域で地震の揺れを経験したペットにもストレスが原因と思われる様々な症状がみられました。1日も早く安心して暮らせる状態に戻してあげられるよう、あらかじめ被災時のペットケアについて学んでおきましょう。
1. ペットのシグナルを受け止めよう
東日本大震災後に起きたペットの変化について、次のような例が報告されました。これらはいずれもペットの恐怖や不安、ストレスによるもの。災害時にはいつも以上にペットをしっかりと観察し、ペットが発するシグナルを見逃さないようにしてください。
■震災後に見られたペットの変化
1)音に敏感になった
地震警報や速報はもちろん、風の音、家がきしむ音、上の階の音などにもペットが敏感に反応するようになったという声が多く聞かれました。音を警戒して吠えてしまう犬がほとんどでしたが、中には「音におびえて部屋の隅で震えてしまう」という例も報告されています。
2)留守番ができなくなった
震災を機に飼い主との離れることを恐れる「分離不安症」の症状が出たケースも報告されています。震災前は普通にできていたお留守番ができなくなってしまい、恐怖のあまり部屋の中で暴れて壁やドアを破壊する犬、自虐行為をする犬、長時間にわたって吠え続けてしまう犬が見られました。
3)サークル・ケージに入らなくなった
震災後、それまで使っていたサークルやケージに入れなくなった犬もいます。これは、何事も場所で覚える犬の本能によるもの。震災時に長い時間サークルやケージの中で過ごしていたため、それがトラウマとなって「サークル・ケージ=怖いもの」と認識。その恐怖心から入れなくなってしまうのです。
2. ペットケアの基本を覚えておこう
■ペットの心のケア
1)まずは飼い主が落ち着こう
災害発生直後、ペットの中には人間同様、驚きと恐怖で一種のパニック状態に陥ってしまうケースも多く見られます。大切なのは飼い主自身がパニック状態にならないようにすること。慌てず騒がず、落ち着いて普段通りに行動する飼い主の様子を見れば、ペットもきっと安心できるはずです。そしてできる限りペットと一緒に過ごして、ゆっくりとコミュニケーションをとってあげましょう。
2)規則正しい生活で日常を取り戻そう
ただし、むやみにペットを抱きしめるのはNG。抱きしめられていないと不安を感じるようになってしまい、かえってペットのストレスを増長させてしまいます。むしろペットの行動に任せ、どこがペットの落ち着く場所なのかを見極めてあげるようにしてください。
被災のショックで心に傷を負ったペットも、その後、お散歩や食事、運動など規則正しい生活を淡々と繰り返しているうちに、少しずつ、以前の落ち着きを取り戻していくことができます。
■ペットマッサージによるケア
被災のショックでお留守番ができなくなる分離不安の症状が出てしまったペットや、イライラして落ち着きがなくなってしまったというペットにおすすめなのが、ペットマッサージによるケアです。ペットの不安抑制に効果があるとされるツボを覚えて、優しくマッサージしてあげてください。
1)攅竹(さんちく)
両方の眉毛の一番内側にあるツボです。目の上の一番高い位置の骨にあたります。緊張をほぐす効果、リラックス効果が期待できます。
2)液門(えきもん)
前肢の小指と薬指の間にある水かきの付け根になるツボです。交感神経と副交感神経の働きを活発にします。
3)丹田(たんでん)
おへその少し下あたり(指1~2本)にあるツボです。東洋医学では「気」を溜めておく場所とされ、マッサージすることで血流がよくなり、感情が安定する効果も得られると言われています。
ペットマッサージは、ペットとのスキンシップにも最適な手段。毎日ペットの体を触ることで健康チェックもできますし、何よりペットとの信頼関係が強まります。気負わず、ペットとの日常的なコミュニケーションの1つとして、マッサージを取り入れてみてはいかがでしょうか。被災時のケアにもきっと役に立つはずです。
次回は災害を想定したトレーニングについてご紹介します。
ドッグトレーナープロフィール
Dog index MIKI(萩原 美樹)
イヌとカナダに渡加したことにより、イヌとのよりよい関係に気付く。 カナダのドッグトレーナー養成学校卒業。 帰国後、2007年 Dog index設立 「おやつ」や「もの」に頼らない人とイヌとの関係性に重視。