血圧とは、心臓から送り出された血流が血管の内壁を押す力(圧力)のことで、全身に酸素や栄養を送り届けるために重要な役割を果たしています。
血圧が低い場合、酸素不足によるふらつきや失神などがみられ、血圧が高くなると全身の臓器障害や他の病気を引き起こす原因となってしまします。
そのため、血圧は正常な範囲でコントロールすることがとても重要です。
高血圧とは血圧が正常な範囲を超えて高くなってしまった状態のことで、血圧の値によって3段階に分類されています。
血圧が高くなるほど目や腎臓、脳、心臓などの臓器障害のリスクが高くなってしまうので、血圧を適切に管理する必要があります。
人と同じように、猫ちゃんの高血圧も様々な病気と関連すると考えられています。代表的なものとして猫ちゃんの慢性腎臓病(CKD)との関連性があげられています。
CKDを持つ猫ちゃんの最大65%で高血圧が認められており、高血圧の猫ちゃんの最大74%でCKDが認められることが報告されています。
※1 F maggio: J Am Vet Med Assoc. 2000 Sep 1;217(5):695-702.
※2 Harriet M Syme: J Am Vet Med Assoc. Jun 15;220(12):1799-804.
高血圧を改善するための治療法として、血管を広げ血圧を下げる作用のある降圧剤や高血圧を引き起こしている原因の治療が一般的です。
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血圧を抑えるお薬
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高血圧の原因疾患の改善
血圧は毎日の生活の中で継続的に管理していく必要があります。猫ちゃんの血圧に関する国際的ガイドラインの中でも、血圧の定期的なチェックが推奨されています。※3
血圧は高すぎても低すぎても猫ちゃんにとって良くないので、バランスを取りながら管理を行うことが重要です。
※3 Acierno MJ, et al. ACVIM consensus statement: Guidelines for the identification, evaluation, and management of systemic hypertension in dogs and cats. J Vet Intern Med. 2018 Nov;32(6):1803-1822.
慢性腎臓病は、腎臓のなかで血液をろ過し、尿をつくる部分(ネフロン)が徐々に壊れていく病気です。
正常な猫の腎臓では、1つ当たり約20万個のネフロンが働いています。
ところが、一部のネフロンが壊れてしまうと、ほかのネフロンがその分も無理して働こうとします。
残されたネフロンに負担がかかりすぎ、さらに壊れるネフロンが増えます。
こうして慢性腎臓病では、腎臓の機能が低下していってしまいます。
腎臓は血液中の老廃物をおしっこに出せなくなりますが、それでも汚れを出そうと無理をして、水のような色の薄いおしっこをたくさん出すようになります。
体のなかに汚れがたくさんたまって、猫は弱ってしまいます。
また、色の薄いおしっこをたくさん出すことで脱水状態になり、うんちは硬くなることが多くなります。
貧血を起こしたり、
骨がもろくなり骨折しやすく
なることもあります。
尿検査
早期発見にとくに役立つ。
とくに7歳齢以上の猫は定期的に検査を受けましょう。
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- ●尿比重:
- 尿の濃い・薄いの判定
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- ●尿蛋白:
- 腎臓に傷害が加わると漏れ出すことがある。
また尿蛋白が腎臓病の悪化を促す。
血液検査
腎臓の機能の大半が失われると検査結果に異常があらわれる。
- ●BUN(尿素窒素):血液中の老廃物。
- ●クレアチニン(Cre):血液中の老廃物。
- ●P(リン):血液中にあるミネラルの1つ。
腎臓の働きが悪くなると
血液中の値が高くなる。
その他
血圧測定(慢性腎臓病のねこの約3割に高血圧があると言われています)、
超音波検査、X線検査、眼底検査などを行うこともあります。
もし慢性腎臓病にかかってしまっても、おくすりや食事の変更などで、
残された腎臓の機能を大切に守って病気の進行を遅らせることもできます。