2017.11.22 11:26
動物福祉最前線インタビュー ドッグトレーナー、保護猫ハウス「こころ」オーナー 保木千春さん
獣医師との結婚を機に、OLからトリマーに転身した保木千春さん。その後、ドッグトレーナーとしての経験を重ねるにつれて大事だと感じたのが「動物の社会性」だと話します。実践する場として、青森初のドッグカフェもオープンさせた保木さんの考える、動物と人間の関わりを伺いました。
―元々、動物はお好きだったのですか?
保木千春さん(以下、保木):はい。生まれたときから自宅にネコがいて、ほかにも犬やウサギ、鳥など、生き物に囲まれて育ちました。東京でOLをしていた頃だけですね、動物と暮らしていなかったのは。動物に関わる仕事をするきっかけは、結婚相手が獣医師だったことです。結婚が決まってから地元青森に戻って開院することが決まったので、OLを続けながらトリミングの夜間コースに通いました。ただ実地経験無しにいきなり1人で受付から診察のサポート、トリミングなどを行わねばならなかったので、最初は無我夢中でした。
―「ほき動物クリニック」の開業が2000年ということですが、開業後に、ドッグトレーナーの資格も取ろうと思ったきっかけは何だったのでしょう。
保木:当時は小型犬ブームでダックスフントやチワワの人気が上がり室内飼育が増えたために、犬と身近に暮らすためのしつけに関心が集まるようになったんです。来院される飼い主さんの悩み事を聞いては、自分で本を読んで勉強したことをお話ししていたのですが、だんだん自己流のしつけ法に限界を感じてしまって…。
2002年にスタッフを1人増やしたのを機に、本格的にドッグトレーニングの勉強をしようと、テリー・ライアン先生の講座などを東京まで受講しに行くようになりました。青森から自分の愛犬を連れてさまざまな場所に行く中で、乗り物の中で快適に過ごすにも、ドッグカフェやドッグランで楽しくすごすにも、やっぱり「社会性」が必要だということを痛感しました。問題行動と言われるトラブルも、子犬のときにトレーニングしておけば発生しないものもあります。病院に来る犬にも落ち着いて治療を受けられる犬とそうじゃない犬がいます。その差は何かと考えると、それもトレーニングを通して身についた「社会性」なんですよね。
他にも様々な講座で学びながら、愛犬でそれを実践して、結果を出すことができました。
次にその方法を多くの方に知って貰うために、10年前に「社会性」を学ぶ場として「DOG GARDEN青森」をオープンしました。私が東京で社会性の大切さに気付いたドッグカフェが、当時の青森には1軒も無かったんです。青森初のドッグカフェには他にも、ショップやサロン、ハイドロセラピーのプールもありますし、「しつけ教室」や「犬の幼稚園」も併設しました。カフェや幼稚園で愛犬と楽しい時間を過ごしながら、しつけを学ぶきっかけにもなれば良いな、と思っています。しつけができれば、犬も飼い主さんも世界が広がりますからね。
―保護猫ハウス「こころ」オープンの経緯は?
保木:動物病院には、事故にあった飼い主のいない猫や、捨てられた猫が連れてこられることが多いんです。最初は自宅に連れ帰って面倒をみては、病院に新しい飼い主さん募集のポスターを貼ったり、あくまで個人として対応していました。「どんどん増えちゃったらどうする?」とも考えた時に、長い間、動物に関わる仕事をしてきた知識や経験をそろそろ還元する時期が来たんじゃないかと思ったんです。「やれることをやろう!」と心に決めました。
動物病院を新築するのを機に旧院を保護猫ハウスにし、昨年は75頭が新しい飼い主さんの元に巣立っていきました。保護猫ハウスを始めてその活動をfacebookで発信するようになったことで、ここに連れて来られる猫の数は3倍になりました。そして、関心を持ってくれる人も3倍になったんです。関心を持ってくれる人には、譲渡の他にもなぜ保護猫が生まれるのかを説明するセミナーなども開いています。
―「動物が幸せに暮らすためにしてあげられること」が原動力なんですね。
保木:数多く助けるのも大切なことだけれど、社会性を身につけないと、ずっとケージの中にいることになってしまうかもしれないじゃないですか。それって、動物にとっては幸せなことではないと思います。動物の社会性を育てるには時間も手間もかかりますが、社会性を身につけた動物は人間社会の一員として楽しく過ごすことができるんです。病院に来た時にも、治療のストレスがグッと少なくなります。
―次々と新たな挑戦を続けておられる保木さんのお話は大変興味深く、その活動には頭がさがる思いです。保木さん、今日はありがとうございました。
ほき動物病院クリニック
http://hokivet.jp/
DOG GARDEN青森
http://www.doggarden.jp
保護ネコハウス「こころ」
http://kokoro.heteml.net/wp/