2017.05.24 9:09
動物福祉最前線インタビュー ネコリパブリック首相 河瀬 麻花さん
2022年2月22日までに日本の猫の殺処分ゼロを目指して設立された自走型保護猫カフェ「ネコリパブリック」。
クラウドファンディング(ネットを通して支援者から財源を募る方法)で心斎橋に「ネコビル」を作ったり、ビジネスの経験を活かしたユニークな手法で「猫助け」を提唱する河瀬さんにお話を伺いました。
―ネコリパブリック設立の経緯を教えてください。
河瀬 麻花さん(以下、河瀬):商社で働いていたのですが、岐阜の家業に戻り家業のパン工場を手伝うようになりました。カフェや小売りも始め、ベーグルを楽天で販売。好きだったネコをキャラクターにしていたので「ネコのベーグル屋さん」と言われて売上も好調でした。
ネコのためのビジネスを始めたのは、東日本大震災がきっかけでした。楽天のベーグルショップで被災ネコのレスキュー資金を作るために、通常金額に数百円プラスしたベーグルを販売したんです。
その支援を通して保護団体と繋がりができたのですが、お手伝いしているうちに保護団体の活動はマンパワーが頼りでお金が回らない、大人のネコの引き取り先がないということを知りました。「だったらビジネスにして自走できるようにしよう」と考え、これまでのビジネスのノウハウを使って企画書と事業計画を作り、岐阜県の助成金を獲得。2014年2月2日に自走型保護猫カフェ「ネコリパブリック(ネコリパ)」を設立しました。
―自走型というのは、ビジネスとして成立させるということなんですね。
河瀬:そうです。私の活動には、常にこのビジネスマインドが活かされています。元々eコマースをやっていたのでクラウドファンディングを思いつき、資金を調達。心斎橋の5階建てビル1棟を保護猫のための複合施設とした「ネコビル」も、クラウドファンディングで作りました。今は、全国で7店舗を営業しています。
ネコカフェも、保護猫の譲渡数を増やすことが主目的ではありません。カフェとしての売り上げ管理をきっちりやっています。しっかりとしたカフェの経営があってこその猫の譲渡活動でなければこのビジネスは続けられないんです。カフェを継続することで「ここに来たら楽しい」「ネコといると楽しい」と知ってもらい、「猫助けしたい」と思ってもらうことが大事だと思っています。ここに来て楽しかったこということをSNSにアップしてもらうだけでも猫助けになりますから。
財産は、ネコ。ビジネスといっても、これで儲けようってことではありません。「食っていくためにネコを救う」じゃなくて、「ネコを救うために、皆が食えるように」という考え方です。
―カフェでの譲渡の条件は?
河瀬:条件は特にありません。連帯保証人を付けていただく場合がありますが、高齢者でも一人暮らしでも大丈夫です。でも誰でもいいというわけではありませんし、一目ボレ譲渡もしません。何度もカフェに来てもらって、自分と合うネコをマッチングしてもらう。ネコを飼うのがはじめての方はカフェでボランティア体験をしてから、ネコが飼えるか判断することもできます。
―「ネコリパ」は、雑誌やテレビで取り上げられることも多いですし、大手企業とのタイアップもやってらっしゃいますが。
河瀬:おしゃれで、カワイイということにこだわっているからじゃないでしょうか。カフェにいる猫1頭ごとのストーリーを大切にしているから、媒体や見ている方の共感を得やすいというプラス効果もあるのでは?と思います。タイアップに関しては、SNSにハッシュタグをつけてつぶやくなど簡単に参加できるものを提案しています。クラウドファンディングにしているのもそうですが、「お金をください」ってお願いするだけだと「寄付疲れ」しちゃうじゃないですか。これも、楽しく猫助けしてもらうということです。
―今後は、どのようなことを考えていらっしゃるのでしょう。
河瀬:これからは、保護や啓発などの非営利のものはNPO法人を設立してやっていきたいと思っています。例えば少年院でミルクボランティアを導入することで受刑者の更生が促進され、再犯率が下がると思うし、老人ホームでも何かできると思うし。
もちろん保護猫カフェは、これからも株式会社として運営していきます。利益で猫助けをしていきたいし、営利を求めないとサービスは生まれませんから。カフェやクラウドファンディングを通して、お客さんには一緒に楽しむ仲間になってほしいんです。心が動くものを提供して、そこにお金を落として猫助けにつなげていきたいという根本は変わりません。
カフェのお客さんも、ネコを引き取ることだけが猫助けではないとわかってほしい。里親さんになれなくても、興味を持って保護が必要なネコがいることを広めてほしい。1人1人がちょっと変われば、大きな変化になります。そうやって社会が少しずつ変わればいい。みなさんにも、この理念を拡散していただけると嬉しいです。
ネコリパブリック
http://www.neco-republic.jp