もう20年以上前のことになりますが、学生当時の同級生が捨てられて彷徨っていた子猫(1カ月齢くらいの雌)を保護して、研究室に連れてきました。アパート暮らしの同級生達は、自宅から通っている私に「この子猫の飼い主になるべきだ」と、提案してきました。
我が家には犬(柴系の雑種、雄)がいることと、父が猫を好きではないことから、どうしたものかと迷いながらひとまず自宅に連れて帰りました。家族会議の結果、「まだ幼いから、保護センターに連れて行けば飼い主が見つかるかも」ということになり、次の日に動物保護センターに連れて行きました。
とても人懐こくて、車の助手席で「ミャーミャー」と愛らしく啼いては、こちらをみていた子猫。良い人に巡り会えるとよいなと思いながら保護センターに着いてみると、なんとなく想像していた雰囲気と違いました。住所や連絡先を記入して受付を済ませると、白衣を着たセンターの獣医さんが登場して一言「じゃ、おいていって」と不機嫌に一言。建物の中を見学したいというと、事前に申し込みが必要だと言われたので、「それではよろしくお願い致します。」と子猫を渡して車に向かいました。
たった1日間しか一緒にいなかったのですが、すでに愛着が涌いていたようで、ちょっぴり寂しくなり、振り返ってみると既に獣医さんは建物の中に入ってしまっていて、子猫も見えなくなっていました。
1週間後、「そういえばあの子猫はどうなったかなぁ」と、父に尋ねると「どうやら保護センターでは、犬は1週間くらい飼い主を捜すけれど、猫は直ぐに処分しているらしい。」との返答。私が車で帰宅するまでの間に、あの子猫は天国に送られていたのでした。現在のように里親会やシェルターが存在していて、それを知っていたら、あの子猫はもう少し長生きできたのかも。
あの獣医さんの不機嫌さについては、動物を助けるために獣医師になったのに、やりたくもない殺処分をしなくてはならないことからきていたのだろうと解釈しています。
メリアル・ジャパン株式会社:学術部 市川康明